動物病院業界の現状について
目次
動物病院業界の現状について
飼い主に支持される動物病院とそれ以外の二極化が進む獣医療業界
動物病院の現状がどのようになっているのか気になっておられる動物病院の院長先生は多いかと思います。
今回は、動物病院業界、獣医療業界の現状として、どういった状態なのかや、今後の動物病院業界のトレンドをお伝えさせていただきます。
では、まず動物病院業界の背景として、施設数の推移や飼育頭数の推移、市場規模について振り返っていきます。
年々増えている動物病院の施設数
動物病院の施設数は、年々増加傾向にあります。下記グラフは、農林水産省が出している「飼育動物診療施設の開設届出状況」をまとめたものです。
飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数):農林水産省
青色の棒グラフが動物病院の施設数を表しております。そして、黄色の折れ線グラフは動物病院の純増数です。
上記のグラフを見てわかる通り、動物病院の施設数の推移は、2006年を境に傾向が大きく異なります。ちなみに2006年は、リーマンショックが起きる2008年の2年前になります。
リーマンショック前というと、ちょうどペットブームのピークの時期です。
下記出典の欄にNTTコム リサーチが出しているペットブームに関する情報を掲載しておきます。後ほど、ご確認していただけますと幸いです。
動物病院の施設数の傾向としては、
リーマンショック以前の動物病院の純増数は、1年に約240施設ほど増えております。
リーマンショック以降の動物病院の純増数は、1年に約200施設ほど増えております。
そして、2014年以降は1年間の動物病院の純増数が減少傾向です。
上記のデータからわかることとして、動物病院の純増数は2006年を境に年々減少傾向にあるということです。
しかし、あくまでも毎年動物病院の数は増えていることがいえます。
次に施設数の推移を考察します。
動物病院の施設数の推移としましては、いまだに右肩上がりというのは大きな特徴になります。
次に、犬と猫の飼育頭数の推移を振り返ります。
犬と猫の飼育頭数の推移
犬猫の飼育頭数の推移をペットフード協会が毎年公表されている情報を元にグラフにいたしました。是非ご確認ください。
青色の折れ線グラフが犬の飼育頭数を表しております。そして、橙色の折れ線グラフが猫の飼育頭数を表しております。この折れ線の推移を見ていると、2015年と2017年に猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回っていることが顕著にわかります。
また、大きなトレンドとして、
上記のグラフから読み取れることは、年々犬の飼育頭数が右肩下がりで減少しているということです。
犬の飼育頭数が減少傾向と言われているのは業界の中で当たり前かと思いますが、実際にデータでも明らかに現象傾向であることが見て取れます。
動物病院の施設数の推移と犬猫の飼育頭数の推移は、犬猫の飼育頭数は全体として減少傾向であるが、動物病院の施設数は増加傾向を表しております。
すなわち、1動物病院あたりの犬猫の飼育頭数が減少傾向であることが言えます。
動物病院の業界が2極化しているのは、単に飼い主の嗜好として流行っている動物病院に行く傾向が強くなっているだけでなく、今までペットを飼っていた飼い主が徐々にペットを飼えなくなり、そうした結果、1動物病院あたりの飼育頭数が減少していることが大きいです。
また、長くされている動物病院ほど、若い飼い主の消費行動について行くことができず、開業したての若い獣医師の先生ほど、若い飼い主から支持されます。
そうした環境があるため、
動物病院の業界は二極化が進んでいくといわれます。
どういった市場でもそうですが、変化することを恐れる動物病院は消費者から支持されなくなり、淘汰されます。
皆様もまずは変化することを恐れないようにしてください。
次に市場規模の考察をします。
仮に市場規模の推移が横這いだとすると、動物病院の競争はかなり激しくなることが予想されます。
動物病院業界の市場規模の推移
下記グラフをご参照ください。
動物病院の市場規模の算出方法は、
統計局で定期的に配信されている
「(品目分類)第10表 年間収入五分位階級別1世帯当たり品目別支出金額及び購入頻度(総世帯)」の内容と、
農林水産省の方で公表されている動物病院の施設数を掛け合わせて算出しております。
このグラフを見てもわかる通り、動物病院の市場規模は増加傾向にあります。
その背景として飼育頭数は減少傾向で、客単価が上がっているためです。
すなわち、飼い主の数が減っているのが業界の流れなので、飼い主離れが大きな動物病院ほど二極化を顕著に感じることになります。
考察
現状、動物病院業界は犬猫の飼育頭数が横這いです。
しかし、動物病院業界としては、今後も競争が激化することが予想されます。
そういった業界背景でも皆様が進みたい方向性に進むことが重要になります。
そういった意味でも、まずは動物病院の方向性を明確にしてください。もし、売上を維持しようと思われているのであれば、その場合は少しずつ飼い主の購買習慣に合わせてください。
もし、厳しい場合は若いスタッフを活用して、今の時代に合った動物病院の経営スタイルを確立してください。現状、私も多くの動物病院の院長先生とお話をしておりますが、なかなか飼い主の習慣に適応している動物病院はありません。
だからこそ、適応することができれば、必ず活路を見出せます。
<出典>
・ペットフード協会
・統計局
・農林水産省
・NTTコム リサーチ
https://research.nttcoms.com/database/data/000598/