動物病院の売上アップの考え方について
動物病院の経営に関わらず、すべての事業の経営における基本式が売上=単価×客数です。そのため、動物病院の経営においても、本質は非常にシンプルで売上をあげるためにはそれを構成している単価と客数を上げればいいということになります。
動物病院の経営においてこの単価と客数はそれぞれ、来院単価と来院数といえます。それら2つ要素をあげる方法について紹介します。
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目次
動物病院の売上について
まずは動物病院の売上の相場はどれくらいなのか見てみましょう。2012年の大阪フレンドロータリークラブの講演会によると、1病院あたりの平均売上は3000万円です。
全体的な分布としては年間総売り上げ500万未満の動物病院は全体の7.3%、500万~700万が全体の4.9%、700万~1000万が全体の4.6%、1000万~2000万が全体の24%、2000万~3000万が全体の20.5%、3000万~5000万が全体の21.1%、5000万~1億が全体の11.5%、1億~3億が全体の6.0%、年間3億円以上の売り上げがある動物病院は0.1%です。
多くの動物病院の年間総売上は1000~5000万の幅であります。
もちろん各病院で差はありますが、基本的にこの売上高から約半分が原価や医療環境の維持費、光熱費などのコストがかかり、残りのうちのさらに半分は人件費がひかれます。つまり利益は売上の約1/4ということになります。
3000万円のうち半分が原価としてなくなるのであれば、残りの1500万円が粗利となります。このうち半分の750万円が人件費、750万円が利益ということになります。ここで利益をどのように解釈するかですが、これはそのまま院長の収入になると考えていいでしょう。
たいてい動物病院は1人の動物看護師と1人の会計担当の従業員がおり、院長を含め計3人はいます。人件費の750万円を院長以外の2~3人の従業員で分けるとすれば、1人あたり平均で250~375万円くらいとなります。よって利益の750万円がそのまま院長の収入となると考えられます。
このように仮に計算して、院長の収入は750万円です。これは概算しての平均的な値ですが、多いのか、少ないのか。
実際、年間総売り上げ2000万円に満たない動物病院は、合計で40.8%もあります。年間総売上が2000万円で同じ計算をすると、院長の収入は500万円となります。年間総売上が1000万円だとすると、院長の収入は250万円となります。
以上が動物病院の年間総売上と院長の収入に関する相場の紹介でした。これらの数字は決して多いと言えるものではないかもしれません。では、この現状を踏まえ、売上を伸ばしていくにはどうすればいいのかについて次で紹介します。
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来院単価を上げる
一般的な経営における単価はもっと詳しく分けると、単価=購買点数×一点当たりの単価 というように分けられます。例えばスーパーで100円のジュース2本を購入した場合、購買点数=2、一点当たりの単価=100となり、単価=200円となります。
動物病院の場合の単価の内訳には通常の診療費、餌やその他ケア用品代、手術や入院費などがあるでしょう。だだし、これらの単価を単純に上げれば売上アップにつながるというわけではありません。ただ診療費が上がるだけでは、逆にお客様が離れてしまうことは言わずもがなです。
ではどのようにして来院単価を上げればいいのでしょうか。
来院単価をあげるには他動物病院との差別化を図り、自院でしかできない独自の強みを持ち、お客様に利益を提供することを考えなければなりません。
まず診療費について、
他動物病院と同じような診療で、診療費は自院の方が高いとなれば、この動物病院は診療費が高いとリピートされてしまいます。診療費の単価アップを考える際は他の病院がやっていない時間帯に診療を行えたり、利便性に長けていたりといった独自の強みを持つことが必要になります。
他動物病院と比べて割高であったとしても、それにともなってお客様の満足度も高くなることを目指します。
餌やその他ケア用品代についてはネットでの通販サイトも競合となり、価格をあげることは難しいですが、診療に関連付けて商品を提供できればお客様の利便性も満たすことができます。
手術や入院費に関しては付加価値がつけやすく、他動物病院と差別化が図りやすいでしょう。しかし、簡単に他動物病院にはない医療技術が身に付くわけではありません。入院において差別化を図るために夜中のサービス向上を目指せば、動物看護師にさらなる人件費がかかります。
高度で最先端の医療機器を取りいれるとなると設備投資も必要になります。このように一朝一夕にはいかない部分も多いでしょう。
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来院数を上げる
一般的な経営における客数はもっと詳しく分けると客数=リピート率×(既存客数+新規顧客数-流出顧客数)となります。
来院数を上げるには、リピート率、既存顧客数、新規顧客数を上げ、流出顧客数を下げることが売上アップにつながります。これら1つ1つの要素について見ていきましょう。
動物病院の評判や評価がそのまま反映されると言っても過言ではないのが、リピート率、既存の顧客数です。これらの要素を上げるには飼い主さんであるお客様から選ばれる動物病院でなければなりません。どんな動物病院がお客様から選ばれるのか考えましょう。
院長先生や動物看護師、職員が丁寧に優しく接してくれる。
動物のことを第一に考えてくれる。
医療機器などの設備が整っている。
医療費が安い。
病院内が清潔で不快なにおいがしない。
など、このほかにもあなた自身がお客様だったらという立場で考えられることを書きだし、それらが病院内でみたされているのかひとつひとつ確認しましょう。
次に新規顧客数を上げることについてです。
新規顧客数を獲得する際に最も重要なのが広告宣伝です。
まずは自院を知ってもらうために、看板や広告、チラシのポスティングなどを利用しましょう。また、自院のホームページを持つことは近年のネット社会において必須といえるでしょう。Google Mapなどで地域の動物病院を検索した際など、ホームページの有無で病院の信頼度が変わってきます。
ただホームページを開設するだけで終わらずに、定期的に情報を更新して発信し続けることが病院の信頼に大きく影響してくるでしょう。最近では新しくその地域に引っ越してきた際、どこに病院があるかというのを知るために、Google Mapをはじめとするアプリやインターネットでの検索を用いることが主流です。
複数表示される病院の中で、自院を選んでもらうか、他社に選ばれてしまうのかはホームページの力にかかっているともいえます。現代のインターネットの力を存分に発揮することが新規顧客獲得に大きく繋がるでしょう。
次に流出顧客を減らすということです。
流出顧客を減らすということは先程のリピート率、既存の顧客様をあげる際と同じように、お客様から選ばれる病院になることが大切です。お客様が他の病院に流れてしまわないように他病院の動向なども常に気にかけておきましょう。ライバル病院も常に地域内のシェアをとるために戦略を練っています。変化の激しい今の時代で生き残るためには、現状維持にとどまらず、常にお客様のためにできることを考えていく必要があります。
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ペットの頭数減少と動物病院増加の背景のなかで動物病院の成功とは
現在の日本における社会問題として常識といえるほど深刻化している少子高齢化によって日本の人口も年々減少しており、今後も減少傾向が続いていくと言われています。
一方で、ペット業界はどうでしょうか。お年寄りの増加によって癒しのためのペットが増加しているのではないか。と考えられそうですが、実際はペットの数も減少傾向にあります。
一般社ペットフード協会によると、実際は2012年から犬猫の頭数は減少し続けており、2012年の21,282千頭から2017年時点での18,446千頭まで減少しています。
それに対し、獣医師と動物病院の数は年々減少傾向にあるのです。これでは、獣医師ひとりあたり、または動物病院一軒あたりの平均の売上は減少せざるをえません。また、動物病院同士の競争が一層と激しくなるなか、売上を維持したり、伸ばしたりする病院も出てきます。動物病院市場全体の規模は減少しているのですから、売上が減少してくる動物病院も増加傾向になります。
これは「動物病院の二極化」ということになります。
ペットの頭数が減少してる背景のなかで、来院数を増加させ、売上も増加させるのは非常に厳しい時代です。そうであれば、来院数が減少しても、売上を増加させるために何ができるかを考えなければなりません。
ここで、先程の1.2.で紹介したように自院だけの独自の強みを持つことで他動物病院と差別化を図るなどの方法が必要となってきます。
動物病院の売上をアップさせ、成功させるには大変な時代であるということが現実です。動物病院の二極化が今後も深刻化していくことが予想されます。自院が売上を継続または伸ばしていく側になるには自院の現状を把握し、常にお客様の立場になって考え、お客様から必要とされる病院であり続ける努力を続けることが大切です。
しかし、動物病院の経営における成功は売上をアップさせることだけではないと私は思います。市場減少の背景があっても、院長自身の動物病院をどのようにしていきたいのかをよく考えていくことが最も大切なことだと思います。
もし、少し迷いがある院長先生は下記をクリックしてください。
考えが整理されると思います。
売上は少なくてもいいから、地域に貢献したり、動物愛護に力をいれたりしたい。といった考えであれば、売上アップする必要はないわけです。院長ひとりひとりの考え方がすべて正解であり、ひとりひとりの目指す動物病院を実現することが動物病院の成功であり、ゴールであると思います。