動物病院の遠隔診療について
目次
「動物病院の遠隔診療について解説します」
動物病院専門の経営コンサルタントが解説
執筆者:株式会社船井総合研究所
動物病院ユニット
今回はコロナによる接触の削減などで注目されている動物病院の遠隔診療について解説していきます。
1.遠隔診療の歴史
まずは遠隔診療の定義を見ていきましょう。日本獣医オンライン診療研究会によると遠隔診療とは、「遠隔医療とは、通信技術を 活用した健康増進、医療、介護に資する行為をいう。」と2005年に定義されたことを発端としています。しかし、この時代の遠隔診療は今のイメージと異なり、実際の医療に踏み込むことは様々な規制があり、難しい現実がありました。
その後、2015年8月に厚生労働省から事実上の遠隔診療解禁通知が出され、多くの医療関係者の注目を浴びました。
さらに、2018年3月に厚生労働省から出された「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の中で、「オンライン診療」とは、 『遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為』であると定義されています。
このように記載されている通り、今遠隔診療と聞いてイメージするリアルタイムでの遠隔診療のスタイルは2018年に定義されました。しかし、医療においては実際に対面して診療を行うことによって分かることが非常に多く、遠隔診療はなかなか発展をしておりませんでした。
しかし、2020年突然訪れた未曽有のコロナ感染症拡大によって、全世界的に人々の動きが制限され、医療においてもできるだけ接触を回避するという観点から、遠隔診療の動きが一気に加速しています。
動物病院の遠隔診療においても、少しずつですが同様の傾向が見られます。今回は動物病院の遠隔診療について詳しく説明していきます。
2.動物病院で遠隔診療として認められていること
獣医療に関する遠隔診療の明確な指針は管轄する農林水産省から出されておりません。
そのため、現状では厚生労働省が指針として出している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をもとに解釈をする必要があります。
そして、その中から解釈すると遠隔診療は現時点で下記2点を満たす場合のみ許可されております。
①初診以外であること
②症状に変化がない場合の対応であること
これから各内容を深堀りしていきます。
①初診以外であること
まず初診以外であることということについてですが
獣医師法第18条に記載されている「無診察診療」に該当しない範囲等で実施しなければなりません。
そのため、初診でいきなり、遠隔診療を行うことは難しく、再診の動物である必要があります。
②症状に変化がない場合
症状に変化がないというのは、前回来院された症状と同じ症状の場合ということです。
前回「下痢」で来院されたのであれば「下痢」が治まらない場合にお薬について決めることができます。
そのため、新しい症状についての診断やお薬の決定などについてはまずはペットを対面で診察してから判断する必要があるのです。
明確な指針が出されてない以上断言することはできませんが現在の遠隔診療には以上のような制限があります。
このようなことからも、獣医療における遠隔診療が現状あいまいな規制の面で適用範囲が難しい部分があることがご理解いただけたかと思います。
◆こういう場合はどうなる?
獣医師の先生と獣医師の先生をテレビ電話でつないで、対面のペットに対して診療を行う場合
状況はイメージできますでしょうか。
より専門性の高い先生が対面で診察している先生の診療の相談に乗っているパターンです。
この場合、ペットと対面している先生はそのペットのことを熟知している必要があり
テレビ電話ごしに状況を見ている専門性の知識を有した先生は
そのペットに対して診断を行うことはできません。
あくまでも対面で診察している獣医師の先生の診断の相談に乗ることしかできません。
専門外来を設けられている動物病院などは特に注意が必要です。
図上は立地がよさそうに見えても、「想像していた感じと違う」と言ったことも生じる可能性も大いにあります。
3.今後考えなければならない対応
今回のコロナ感染症による大規模な自粛、現在日本が超高齢化社会へと進んでいることからも、今後数年間の間に診察風景が大きく変化していく可能性が高いです。
では、どのように変化していくのでしょうか。
大きな変化としては
ペットを飼っている60代の飼い主様は病院になかなか足を運びにくくなっていきます。
そのような社会の変化に対して、現在は様々な規制の面で実現が難しいオンライン診療がスタンダードになってくる未来がもうすでに近い将来に来ているかもしれません。
そのような時代の流れに対して常にアンテナをはっている動物病院と今までの診療スタイルを貫く動物病院ではこれだけ不確実性の高い現代社会において、どちらが淘汰され、伸びていくのかは明らかです。
しっかりと時代の流れを先読みして、適切な経営判断を下すことが求められる今、1つオンライン診療の今後の流れを注視することは必要であると考えられます。