動物病院の人件費の目安・計算方法・分析方法・改善方法とは?
目次
「¬動物病院の人件費の目安・計算方法・分析方法・改善方法を専門コンサルタントが徹底解説」
執筆者:株式会社船井総合研究所
動物病院ユニット
動物病院の経営を長く続けるには、売上アップの方法だけではなく、適切なコスト管理にも注目が必要です。人件費が高すぎると、売上に対して利益率が低くなります。ここでは、動物病院の人件費の目安、計算方法、分析方法から改善方法まで詳しくご紹介します。
そもそも人件費とは
人件費とは、「従業員に支払う給料」、「手当」、「賞与」、「社会保険料を含む福利厚生費」など、人を雇用すると必要になる費用のことです。人件費は、動物病院を経営するうえで必ず発生します。
人件費が下がると利益率が上がりますが、人件費をむやみに下げると売上が下がる恐れがあります。そのため、人件費の正しい知識を身につけて、適切に見直すことが大切です。
動物病院の人件費の計算方法
・給与
・賞与
・手当
・福利厚生費
これらを従業員ごとに算出し、合算します。また、人件費の計算とあわせて、「人件費率」の計算方法も確認しておきましょう。人件費率は、売上に対して人件費が占める割合のことで、次の計算式で算出します。
人件費率=人件費÷売上
動物病院を適切な人件費率で運営するためにも、計算方法を覚えておきましょう。
動物病院の人件費の目安
動物病院の人件費は、売上規模に合わせて決める必要があります。そのため、人件費の目安は動物病院によって異なります。動物病院の従業員の年収は、地域やスキルなどで異なりますが、正社員や契約社員で300~400万円が目安です。
大まかな計算にはなりますが、スタッフ5名全員が年収300万円の収入を得ている場合、年間1,500万円の人件費がかかります。動物病院における人件費率は40%程度とされているため、これを超える場合は見直しが必要でしょう。
経営分析の方法
動物病院の利益率が低いと感じている場合は、経営分析をしましょう。また、これから動物病院を開院する場合も、開業当初から適切な人件費率を保てるように分析することが大切です。
経営分析では、人件費の負担と労働分配率に注目しましょう。
人件費の負担について
人件費の予算を決めるときは、他の動物病院の平均値と比較してみてください。特に、黒字経営をしている動物病院の人件費は参考になるでしょう。身近に動物病院の開業医がいる場合は、人件費を尋ねてみてもよいかもしれません。
ただし、前述したように、人件費の負担額は売上に対する比率が重要です。そのため、自院と似た売上規模の動物病院の人件費を参考にする必要があります。
そして、自院の人件費率が40%を超えている場合は、その原因を突き止めることを心がけましょう。
人件費が高くなりすぎる原因は、次のとおりです。
・正社員や契約社員が多すぎる
・来院数が少ない時間帯に人員が集中している
・開院時間に対して売上が少ない
・デジタル化ができておらず多くのマンパワーを求められる
人件費が高くなりすぎる原因は動物病院によって異なるうえに、ご自身では原因を突き止めることが難しいケースが少なくありません。そのため、経営改善のための豊富な知識を持つ経営コンサルタントへの相談をおすすめします。
労働分配率について
労働分配率は「動物病院の経営によって得た利益から、従業員にどの程度の対価が支払われているか」を示します。労働分配率の計算方法は次のとおりです。
労働分配率=人件費÷付加価値
付加価値とは、動物病院を経営するうえで生み出したプラスαの価値のことです。例えば、100円で仕入れたものを200円で販売すれば、100円の付加価値が生まれます。
動物病院に当てはめると、「動物の病気や健康について配信する有料メルマガ」を導入した例がわかりやすいでしょう。例えば、1通のコストが50円のメルマガを月4回配信した場合のコストは月200円です。これを月額500円で配信すれば、月300円の付加価値が生まれます。
労働分配率が上がるほどに、従業員への還元率が大きいということのため、結果的に動物病院の純利益は低くなります。だからといって労働分配率が下がると、付加価値に対して十分な給与をもらえていないことになり、従業員のモチベーションが低下するでしょう。
そのため、適切な労働分配率を維持することが重要です。
人件費が高すぎる場合の改善方法
人件費率が40%を超えている場合は、次のような取り組みで改善を目指しましょう。
必要なスタッフ数を正確に割り出す
来院数に対してスタッフの人数が多すぎる場合があります。例えば、受付スタッフが2名常駐していても、実際に2名が同時に受付するケースが少ない場合、1名分の人件費が無駄になっています。
受付後の各種手続き、処理などの作業が多い場合は、受付スタッフを2名常駐してもよいかもしれませんが、いずれかをパートタイムに変更したり、他のスタッフが片手間に作業したりすることも検討しましょう。
個々の給与はむやみに減らさない
人件費率を改善するときに、まずスタッフの給料の減額や福利厚生費の削減を検討する経営者は少なくありません。しかし、給与を減額するとスタッフのモチベーションが低下して、業務がまわらなくなったり売上が低下したりする恐れがあります。
例えば、給与の減額に不満を感じているスタッフは、顧客への対応の質が下がり、顧客満足度が低下する場合があるのです。そうなれば、二度と来院してもらえなくなるでしょう。
人件費の質に注目する
人件費が高いほどに売上が上がるわけではありません。そのため、「人件費の質」に注目が必要です。近年では、外部委託の活用によって、人件費を抑える流れがあります。全ての外部委託が該当するわけではありませんが、接遇サービスや動物病院に求められる倫理意識などが低く、結果的に売上の低下に繋がるケースが少なくありません。
まずは、人件費の質を高めるための人事制度を構築することをおすすめします。例えば、従業員の行動を適切に評価する「人事評価制度」を導入すれば、給料アップの指標が目に見えるため、モチベーションが上がる可能性があります。
ITシステムを有効活用する
動物病院の経営を効率化できるITシステムの導入を検討しましょう。給与計算1つにしても、ITシステムによって簡略化できます。人の手が必要なところと、ITシステムで代用できるところを明確に分けて、必要最小限のスタッフのみで運営すれば、人件費率を抑えられます。
開院時間を見直す
開院時間が適切か見直しましょう。例えば、9:00~12:00、13:00~16:00、17:00~20:00の3部構成とした場合、この中で来院数が非常に少ない時間帯がないか確認してみてください。地域によっては、19:00以降の来院数が非常に少ないでしょう。
1時間でも開院時間を減らして、適切な人件費に近づけることが大切です。
パート従業員と正社員のバランスをとる
来院数や業務量に対してスタッフの人数が多すぎる場合は、パート従業員に切り替えられないか交渉してみましょう。正社員は、雇用主の都合で自由に解雇できないため、スタッフとの交渉が必要になります。
また、全員が正社員の場合、1人あたりの業務量が多くなり、スタッフが1人でも退職すると業務に大きな穴が空きます。このようなリスク面も踏まえると、パート従業員と正社員を組み合わせた方がよいでしょう。
まとめ
動物病院の人件費が高すぎる場合、利益率が少なくなります。業務量や来院数を踏まえ、適切な人件費率になるように見直すことが大切です。これから動物病院を開院する場合は、開業コンサルタントに相談して、人件費のアドバイスを受けることをおすすめします。
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